ステージング環境とはシステム開発工程の一つで、本番環境と同様の状態でシステムの動作や不具合のチェックを行う段階のことです。開発環境で開発を進め、テスト環境、ステージング環境で問題がなければ、本番環境へとデプロイ(移行)します。
なお、テスト環境とステージング環境は、どちらもチェックを行う工程なので混同されやすいです。それぞれの役割を確認しましょう。そこでこの記事では、システム開発およびWeb開発におけるステージング環境の概要と、構築の注意点を解説します
目次
ステージング環境とは
ステージング環境とは、システム開発における最終的なテストを行う環境のことで、本番環境とほぼ同じ状態である点が特徴です。大きな括りで見るとステージング環境はテスト環境の一部ですが、リリースに向けて本番を想定した環境となっています。
テスト環境は単体テストや結合テストを行う工程であり、プログラムを一つずつチェックし、誤記やリンクミスがあれば修正していきます。対して、ステージング環境はプログラム全体の動作を確認する工程で、リリース後の不具合発生のリスクを下げるために必要です。実際システム開発の現場では、テスト環境では正常に動いても、ステージング環境で不具合が起きるケースは少なくありません。
また、ステージング環境はWebサービスが稼働した後でも使います。基本的には、サービスをストップさせて修正する場合にステージング環境が必要です。例えば、WordPressのようなコンテンツ管理システムの場合だと、モジュールのアップデートを行う際に必要とされます。
開発で失敗しないためには、このようなステージング環境の特徴と必要性を押さえておくことが大切です。
システム開発からリリースまでの基本的な流れ
ステージング環境は具体的にシステム環境のどの段階で使われるのでしょうか。サービス公開までの基本の流れと一緒に見ていきましょう。
1.開発環境でコードを記述
開発環境とは、ソフトウェア開発において、エンジニアがコーディングを行うための環境のことです。具体的には、開発に必要なエディタやコンパイラ、デバッガなどで構成されます。
基本的に開発環境は、エンジニア個人のローカル環境(使用している端末)を利用しています。エンジニアが複数人いる場合は、各々が記述したコードを結合する必要があるでしょう。なお、開発環境では記述したコードが動くかどうかの動作確認までが求められます。
2.検証環境で機能テストを実施
検証環境とは一般的にテスト環境とも呼ばれ、エンジニアが開発した機能の動作を検証する環境のことです。開発環境と検証環境は分離されている場合が多く、分けることでテストを行いながら別の案件の開発を進められます。
特に小規模開発やアジャイル開発であれば、テストと開発を同時に行うケースが多いです。開発の規模が大きい場合は検証環境が複数用意され、複数の担当者がテストを行うこともあります。
3.ステージング環境で本番動作を確認
検証環境まで問題なく進んだらステージング環境に移り、本番動作の確認を実施します。実際に本番と同じ設定、同じソフトウェアを使って検証しなければなりません。もしステージング環境のテストで問題が発生すれば、再度開発環境・検証環境に戻って修正します。
近年ではクラウドや仮想化技術の向上により、同一の環境を構築するのが容易になりました。
4.本番環境でサービスを公開
本番環境とは、システムがサービスとして稼働している環境のことです。Webサービスの開発であれば、サービスを公開してユーザーが使える状態にします。すべてのテストが完了した後に移行する環境であり、問題なく動作できるかどうかが求められます。
開発のゴールは本番環境で利用できるようにすることです。それを実現するためには最初の要件定義の段階で、バックアップなどの運用体制を検討しておく必要があります。
ステージング環境の構築で気を付けること
最後に、ステージング環境を構築するときに注意すべきことを見ていきましょう。
本番環境に近い状況を用意する
ステージング環境は、本番前の最終的な検証段階です。そのため、本番環境で失敗しないようにするため、ほぼ同じ環境を用意しなければなりません。もし本番環境と全く違う環境で検証を行って本番環境に移行した場合、本番で不具合が発生するリスクが生まれるでしょう。
本番環境で使えるディレクトリ構成にする
ステージング環境を構築する際には本番環境にできる限り近づけるため、そのままコピーして使えるディレクトリ構成にします。本番環境とステージング環境の差分を少なくする必要があるでしょう。
ミスをなくすためにも、テスト環境用のフォルダを本番環境のフォルダに上書きできるような状態が望ましいです。
絶対パスと相対パスの使い分けをする
Webサービスを開発している場合、HTMLコードのパスを使い分ける必要があります。このパスには大きく分けて「絶対パス」と「相対パス」の2種類があります。絶対パスはファイルをすべて記述する方法であり、相対パスは対象のファイルのみを記述する方法です。
例えば、絶対パスはWebサーバにつながるコードの記述になるため、ローカル環境ではテストを行えません。テストをするときには相対パスを使い、本番化する前に絶対パスに切り替える必要があるでしょう。
ステージング環境について理解し、開発を進めよう
ステージング環境は、本番に限りなく近い検証環境の最終段階のことです。
テスト環境で動作していても、本番環境で不具合が発生することは少なくありません。ステージング環境があれば、リリース後に不具合が発生するリスクを抑えられます。本番で失敗しないためにも、ステージング環境の特徴を押さえて開発を進めましょう。
なお、開発効率を上げるなら、ノンコーディングでの開発ができたり開発工程の管理ができたりする開発ツールの導入も検討してみてはいかがでしょうか。